
湯灌に用いる「逆さ水」とは
- 湯灌の準備人は誰しもいつかはその生涯を終え、あの世へと旅立ちます。その最後のお別れに際し、古くから日本では故人の体を清め、来世へと送り出す「湯灌」という儀式が行われてきました。湯灌は、ただ体を洗うだけでなく、生前の姿を思い起こし、感謝の気持ちを込めて丁寧に洗い清めることで、故人を丁重に弔うための大切な儀式です。湯灌を行うにあたり、様々な準備が必要となります。その中でも特に重要なのが、「湯灌の儀」に用いる水です。湯灌では、単なる水ではなく、「逆さ水」と呼ばれる特別な水が用いられることがあります。逆さ水とは、桶に汲んだ水を一度別の桶に移し替え、再び元の桶に戻すことで、一度死の世界に浸し、再びこの世に戻ってきた水という意味が込められています。逆さ水は、故人が迷わずあの世へと旅立てることができるようにとの願いが込められた、古くからの知恵と信仰の表れと言えるでしょう。また、湯灌で使用する桶やタオルなども、故人を弔う気持ちを込めて、新しいものを用意するのが一般的です。湯灌は、ただ単に故人の体を清める行為ではありません。それは、残された者たちが故人との最後の時間を共有し、感謝の気持ちを込めて、あの世へと送り出すための大切な儀式なのです。