
鯨幕と蘇幕:弔事における色の変遷
- 鯨幕と蘇幕とは鯨幕と蘇幕は、どちらも葬儀や法要の際に用いられる幕ですが、その由来や歴史、そして現代における使用状況に違いが見られます。-# 鯨幕白と黒の縞模様が特徴鯨幕はその名の通り、鯨の肌の色に似ていることからその名がついたと言われています。白と黒の縞模様が特徴で、かつては葬儀の際に広く用いられていました。その起源は古く、仏教が伝来した飛鳥時代まで遡るとも言われています。当時の日本では、鯨は海の王者として畏怖の念を抱かれると同時に、その巨体から豊穣の象徴として捉えられていました。そのため、鯨幕を用いることは、故人の冥福を祈り、豊かさを来世にもたらすことを願う意味合いがあったと考えられています。-# 蘇幕黒一色で広く普及一方、蘇幕は黒一色の幕のことを指します。その名前は、中国の宋の時代に蘇州で織られた絹織物に由来するとされています。蘇州は絹織物の産地として知られており、そこから黒色の絹織物が日本に伝わると、その高級感と厳粛な雰囲気から、葬儀の際に用いられるようになりました。江戸時代に入ると、蘇幕は幕府によって奨励され、広く普及していきました。-# 現代における鯨幕と蘇幕現代では、蘇幕が葬儀の際の主流となっています。黒一色の蘇幕は、故人を偲び、悲しみを表す色として、現代の葬儀にも相応しいとされています。一方、鯨幕は地域によってはまだ見られますが、全国的に見るとその数は減少傾向にあります。しかし、その独特の縞模様は、日本の葬儀の歴史を語る上で貴重なものであり、今後もその文化的な価値が継承されていくことが期待されます。