
神道式の葬儀に用いられる「朽木幕」とは?
- 朽木幕の由来神道式の葬儀に参列すると、見慣れない品々に戸惑うこともあるかもしれません。その中でも、故人の遺影の後ろに静かに佇む「朽木幕」は、独特の存在感を放つものです。一見すると、白地に紫の模様という控えめな印象を受けますが、そこには深い意味が込められています。「朽木幕」の名は、その名の通り、朽ち果てた木を思わせる模様に由来します。朽ちた木は、一見すると生命の終わりを象徴するように思えます。しかし、古代の人々にとって、朽ち木は単なる死ではなく、新たな生命を育むための土壌となる、循環の一つの過程として捉えられていました。それは、命のバトンが次の世代へと受け継がれていく様を想起させます。また、白と紫の色の組み合わせにも重要な意味があります。神道において、白は神聖さを表す色として尊ばれ、神事の際に着用する衣裳にも多く用いられています。一方、紫色は、古来より高貴な色とされ、位の高い人物のみに許された特別な色でした。このように、朽木幕は、一見地味な外見ながらも、生命の循環と再生、そして神聖さと高貴さを象徴する、深い意味を持つ葬儀品です。それは、故人が安らかに旅立ち、次の世界へと進むことを祈る、遺族の静かな祈りの心を表していると言えるでしょう。