
葬儀の知恵:渡し箸の役割と意味
日本では近年、火葬によって故人を見送る形が一般的になりました。火葬炉の炎によって肉体は灰となっていきますが、その中にあって骨は残ります。この残った骨を骨壺に納めるために行われるのが「拾骨」という儀式です。火葬が済むと、遺族は火葬場の収骨室へと案内されます。そして、火葬場の方から骨の説明を受けながら、二人一組で箸を使い骨を拾い上げていきます。この時使用する箸を「渡し箸」と呼びます。渡し箸には、一方の箸を故人が持ち、もう一方を遺族が持つことで、あの世とこの世を繋ぎ、一緒に骨を拾うという意味が込められています。また、箸から箸へと骨を渡すのではなく、直接骨壺へと納めるのが一般的です。これは、再びこの世に遺骨が戻ってこないようにという願いが込められているからです。拾骨は、故人の身体を火葬した後に行われる、いわば最後の別れを惜しむための大切な儀式です。それぞれの地域や宗教によって作法は異なりますが、故人を偲び、冥福を祈る気持ちは万国共通と言えるでしょう。