
お墓の蹲踞(つくばい):その役割と変遷
- 蹲踞とはお墓参りをすると、墓石の脇に置かれた石組みをよく見かけますよね。中央が窪んでいて、水が溜まっているその石組みは「蹲踞(つくばい)」と呼ばれ、単なる飾りではなく、大切な役割を持つものです。古来より日本では、水には穢れを洗い流し、邪気を払う力があると信じられてきました。そこで、大切な人を亡くした悲しみの場である墓前にも水が置かれるようになったのです。蹲踞に溜められた水は、故人の魂を清め、慰めるためのものであると同時に、お墓参りに訪れた人が手を清め、身を清めるためのものでもあります。手を清める際には、柄杓(ひしゃく)に水を汲み、まず左手に水をかけます。次に柄杓を持ち替えて右手に水をかけ、最後に再び左手に水を溜めて口をすすぎます。そして残った水を柄杓の柄に伝わせて流し、最後に柄杓を伏せて元の場所に戻します。このように、蹲踞は故人を偲び、敬意を表す場であるお墓において、必要不可欠な役割を担っていると言えるでしょう。