故人を見送る「おくりびと」の役割と意味
葬儀と墓石を知りたい
先生、「おくりびと」って映画で話題になった仕事ですよね?どんな仕事なんですか?
葬儀と墓石の研究家
そうだね。「おくりびと」は亡くなった方を棺に納めるまでのお手伝いをする仕事だよ。具体的には、故人をお風呂に入れたり、服を着せたり、化粧をしたりするんだよ。
葬儀と墓石を知りたい
へえー、そうなんですね!亡くなった方を綺麗にする仕事なんですね。湯灌師とは違うんですか?
葬儀と墓石の研究家
いい質問だね!湯灌師はお風呂に入れたり、身体を洗ったりすることに特化した人たちなんだ。おくりびとは、湯灌師の仕事も含めて、棺に納めるまで全体を担当する場合が多いんだよ。
おくりびととは。
「おくりびと」という言葉は、ご遺体を棺に納めるお仕事をする方を指します。映画にもなったので、この言葉を知っている方も多いかもしれませんね。同じように、故人をお湯で清めるお仕事は「湯灌師」と呼ばれることもあります。神道の場合には、白い着物をお着せするなど、宗教によって様々な作法があります。ちなみに、映画の「おくりびと」は、日本アカデミー賞で最も素晴らしい作品に贈られる賞などを受賞したんですよ。
映画で話題に
近年、葬儀や死者を弔う儀式に関する関心が高まっていますが、その背景には、2008年に公開された映画『おくりびと』の影響は無視できません。
故人の体を棺に納めるまでの過程を丁寧に描くこの映画は、日本国内にとどまらず、海外でも高い評価を受けました。
日本映画としては異例のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことで、『おくりびと』という言葉は、一躍、広く知られるようになりました。
映画の中で、俳優の本木雅弘さんが演じた主人公は、当初は戸惑いながらも、次第に『おくりびと』の仕事に誇りをていきます。
故人との最後の時間を彩り、残された家族の悲しみに寄り添う主人公の姿は、多くの観客に感動を与え、生と死について深く考えさせるきっかけを与えてくれました。
また、映画のヒットは、葬儀に対する人々の意識にも変化をもたらしました。
従来の形式にとらわれず、故人の好きだった音楽を流したり、思い出の品を飾ったりするなど、それぞれの故人に合わせた葬儀を行う人々が増えています。
映画『おくりびと』は、私たちに、人生の終わり方を考えさせ、命の尊さを改めて認識させてくれる作品と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
背景 | 2008年公開の映画『おくりびと』の影響 |
映画の影響 |
|
映画の内容 |
|
映画の効果 |
|
ご遺体を送り出す専門家
ご遺体を送り出す専門家、それは「納棺師」と呼ばれる人たちです。彼らは、故人にとって最後の身支度を整え、この世からあの世へと旅立つお手伝いをする、大切な役割を担っています。
ご遺族にとって、愛する人とのお別れは、想像を絶するほどの悲しみと苦痛を伴うものです。 そのような深い悲しみに暮れるご遺族に代わり、納棺師は、故人への感謝と敬意の念を込めて、ご遺体を丁寧に扱い、安らかな表情で旅立ちを迎えられるよう、心を込めて「湯灌」を行います。
まず、温かいお湯と石鹸を使い、故人の身体をやさしく洗い清めます。そして、生前に愛用していた化粧品や、納棺師が故人のイメージに合わせて選んだ化粧品で、顔に化粧を施していきます。
故人の好きな色や柄の死に装束を着せ、棺に納めます。この一連の儀式は、ただ単に身体を整えるだけでなく、故人の魂を浄化し、安らかな旅立ちを祈る意味も込められています。
映画『おくりびと』でも描かれていたように、納棺師の所作は美しく、神聖な雰囲気さえ漂います。それは、技術だけでなく、故人への深い愛情と敬意の表れと言えるでしょう。
湯灌師との違い
– 湯灌師との違い「おくりびと」と聞いて、似たような言葉に「湯灌師」を思い浮かべる方もいるかもしれません。どちらも亡くなった方を扱う仕事であることは共通していますが、その役割には違いがあります。「湯灌師」は、故人の身体を洗い清める「湯灌」と呼ばれる儀式を専門に行う職業です。湯灌は、故人が生前と同じようにお風呂に入っているように見立てて、温めたお湯と石鹸を使って身体を丁寧に洗い流す儀式です。湯灌師はこの湯灌を専門に行い、故人を来世へと送り出すための重要な役割を担っています。一方、「おくりびと」は、湯灌を含め、ご遺体を棺に納めるまでの一連の作業全般を行います。具体的には、故人の搬送から始まり、身体を拭いて清める、顔の剃毛、死化粧、着付け、納棺など、多岐にわたる作業をこなします。つまり、湯灌は「おくりびと」が行う業務の一つに過ぎないと言えます。ただし、地域や葬儀社によっては、「おくりびと」が湯灌も行う場合があります。これは、湯灌師を専門に置くことが難しい地方や、葬儀社の規模などによって異なるため、「おくりびと」と「湯灌師」の間に明確な線引きがない場合もある点は留意が必要です。
項目 | 内容 |
---|---|
湯灌師 |
|
おくりびと |
|
宗教による違い
日本では古くから様々な宗教や宗派が信仰されており、葬儀の形式も多岐に渡ります。そのため、故人やそのご遺族の信仰する宗教や宗派に合わせて、葬儀の形式や作法を理解することが「おくりびと」には求められます。
例えば、神道においては、人は亡くなると神様の御霊になると考えられており、葬儀は「神様に送り返す儀式」として執り行われます。そのため、故人には白い小袖を身につけさせ、三角形の白い布でできた「額烏帽子」と呼ばれるものを頭に被せるなど、独自の習慣があります。また、仏式の葬儀でよく見られる焼香の代わりに、玉串と呼ばれる榊の枝を神前に捧げて拝礼する「玉串奉奠」を行います。
一方、仏教では、人は亡くなると来世で仏になるために修行の旅に出ると考えられています。そのため、葬儀は故人が迷わずに旅立てるように祈りを捧げ、冥福を祈るための儀式となります。仏式の葬儀では、故人は「経帷子」と呼ばれる白い着物に身を包み、数珠を持つことが一般的です。また、宗派によって読経の内容や焼香の作法が異なるため、「おくりびと」は事前に故人の宗派を確認しておく必要があります。
このように、「おくりびと」はそれぞれの宗教や宗派の作法を理解し、適切な対応を行うことが求められます。細やかな気配りと思いやりを持って、故人を丁寧に送り出すことが「おくりびと」の大切な役割と言えるでしょう。
項目 | 神道 | 仏教 |
---|---|---|
死生観 | 人は亡くなると神様の御霊になる | 人は亡くなると来世で仏になるために修行の旅に出る |
葬儀の意味 | 神様に送り返す儀式 | 故人が迷わずに旅立てるように祈りを捧げ、冥福を祈るための儀式 |
装い | 白い小袖、額烏帽子 | 経帷子、数珠 |
儀式 | 玉串奉奠 | 読経、焼香(宗派により異なる) |
大切な役割
人の最期を穏やかに、そして美しく彩る、それが「おくりびと」と呼ばれる仕事です。
「おくりびと」は、ただ亡くなった方を棺に納めるだけではありません。生前の面影を残すように、あるいは安らかな眠りにつけるように、故人の体を洗い清め、化粧を施し、服装を整えます。それは、まるで長い旅路に送り出すための最後の身支度。故人への深い敬意と愛情が込められた、神聖な儀式とも言えるでしょう。
深い悲しみに暮れるご遺族にとって、「おくりびと」は、温かい光となってくれます。「おくりびと」は、悲しみを分かち合い、心を込めて故人を見送り、残された人々の心を支える存在でもあるのです。
故人にとっては安らかな旅立ちを、そしてご遺族にとっては深い悲しみを乗り越えるための心の支えとなる「おくりびと」。その存在は、私たちが「死」と向き合い、人生の尊さを改めて認識させてくれる、かけがえのないものと言えるでしょう。