複数のご先祖様を一つにまとめる：繰り出し位牌

複数のご先祖様を一つにまとめる：繰り出し位牌

現代の住宅事情に合わせた位牌

– 現代の住宅事情に合わせた位牌

近年、都市部を中心に住宅のコンパクト化が進み、従来のような広い仏間を設けることが難しいケースが増えてきました。それに伴い、仏壇のサイズも小さくなる傾向があり、ご先祖様一人ひとりに専用の位牌を置くことが困難な場合も少なくありません。

このような時代の変化に伴い、注目されているのが「繰り出し位牌」です。繰り出し位牌は、複数のご先祖様の戒名を一つの位牌にまとめることができるため、限られたスペースでも多くの位牌を安置することができます。従来の位牌と比べてコンパクトながらも、厳粛な雰囲気を保ちつつ、ご先祖様を丁寧に供養することができます。

繰り出し位牌には、扉の開閉によって戒名を順番に表示するタイプや、巻物のように戒名が連なるタイプなど、様々な種類があります。ご家庭の仏壇のサイズやデザイン、またはお祀りする人数によって最適なものを選ぶことができます。

現代の住宅事情に合わせて、伝統的な様式と現代のニーズを融合させた繰り出し位牌は、多くの方々から支持を集めています。

繰り出し位牌の仕組み

– 繰り出し位牌の仕組み

繰り出し位牌は、一見すると通常の位牌と同じように見えますが、内部には薄い木板が複数枚収納できるという特徴があります。この木板は「札」や「札板」と呼ばれ、一枚一枚に故人の戒名と没年月日、享年などが記されています。

普段は「○○家」や「先祖代々」といったように、家の名字や全体の名称が書かれた板を正面に置いておきます。そして、法要などの際には、故人の命日にあたる札を取り出して、正面に繰り出して配置するのです。

この仕組みによって、一つのお位牌で複数の故人を祀ることが可能になります。そのため、限られたスペースで多くの位牌を安置する必要がなく、特に都市部やマンション住まいの方々に適した位牌と言えるでしょう。また、故人一人ひとりの命日を明確に把握できるというメリットもあります。

法要の際など、故人を偲ぶ際に

人が亡くなり、四十九日の忌明けを迎えると、白木でできた白木の位牌から、漆塗りの豪華な黒塗りの位牌、つまり仏壇に安置する本位牌へと作り変えます。この本位牌には、故人だけでなく、その家の過去の故人の戒名も記されています。そのため、仏壇の大きさに合わせて、たくさんの戒名が縦に連なるように書かれた、まるで一つの大きな木の板のような形をしています。

しかし、法要などの際には、故人一人ひとりを偲びたいという思いから、この本位牌から個別の戒名が書かれた木板を取り出すことができるように作られています。この取り出すことができる部分を「繰り出し位牌」と呼びます。

法要や命日など、特定の故人を偲ぶ際には、この繰り出し位牌から該当する戒名が書かれた木板を取り出し、仏壇の正面に掲げます。これにより、まるで個別の位牌があるかのように、故人をより身近に感じながら供養することができるのです。まるで故人が私たちに寄り添い、共に過ごしてくれるかのような感覚を味わえる、先人の想いが込められた伝統的な仕組みと言えるでしょう。

位牌の順番にも決まりがあります

お仏壇の中心に位置する位牌。毎日手を合わせる大切なものだからこそ、その並べ方には一定のルールが存在することをご存知でしょうか。

特に、複数のご先祖様をまとめる繰り出し位牌は、限られたスペースの中で多くの位牌を納めるため、順番に配慮が必要です。

一般的には、位牌は古い時代から順番に、奥から手前に向かって並べられます。これは、まるで家系図を眺めるように、ご先祖様とのつながりを意識するためです。

しかし、地域や宗派によっては、ご命日順に並べる場合もあります。この場合、祥月命日が過ぎた位牌は後ろに戻し、次に祥月命日を迎える方を前に出すことで、より身近にご先祖様を偲ぶことができるのです。

このように、繰り出し位牌は、時代の流れとともに変化した現代の住宅事情にも対応できる、柔軟性を持った供養の形と言えるでしょう。