葬儀における後祓いの儀：穢れを祓い清める儀式

葬儀における後祓いの儀：穢れを祓い清める儀式

神道における死の捉え方

神道において、死は「穢れ（けがれ）」と捉えられます。この「穢れ」は、私たちが日常で使う「汚い」という意味とは異なり、生命エネルギーである「気」が弱まってしまう状態を指します。人が亡くなると、その周囲には「気」の衰えが生じると考えられており、これが「穢れ」として認識されるのです。

神道には、この死による「穢れ」を避けるための儀式が数多く存在します。例えば、家族が亡くなった場合、神棚を白い紙で覆って閉じます。これは単に神棚を隠すためではなく、神聖な場所である神棚を現世から隔離することで、「穢れ」から守るという意味合いがあります。

また、神棚への毎日の供え物やお祈りは、五十日祭の忌明けまで控えます。これは、神様への礼儀という側面もありますが、「穢れ」に触れることを避けるという意味合いが強いのです。このように、神道においては死と「穢れ」は密接に結びついており、様々な儀式を通して「穢れ」の影響を最小限に抑えようとする考え方が根底にあります。

神道の葬儀の流れと後祓いの儀

日本の伝統的な信仰である神道では、仏教式の葬儀とは異なる独自の形式で葬儀が執り行われます。一般的な神道の葬儀は、故人の魂を悼み、あの世へと見送るための儀式が、通夜祭、遷霊祭、神葬祭、出棺祭、火葬祭、帰家祭といった流れで厳かに行われます。

これらの儀式の中でも、「後祓いの儀」は、出棺祭の後、棺が火葬場へと運び出された後に行われる重要な儀式です。火葬に同行しなかった残された人々が、故人の魂が迷わずにあの世へと旅立てるようにと願いを込めて執り行います。

具体的には、神職が、参列者と共にお祓いをします。そして、塩や水などを使って、場所や参列者を清めます。これにより、葬儀に関わるあらゆる穢れを祓い清め、残された人々が再び清浄な状態に戻ることを意味します。後祓いの儀は、故人との別れを惜しみつつも、前向きに生きていくために必要な儀式と言えるでしょう。

後祓いの儀の詳細

– 後祓いの儀の詳細

後祓いの儀は、葬儀に参列した人々が、故人を偲びつつも、死の穢れを清めるための大切な儀式です。

まず、神聖な場所であった祭壇を丁重に片付けることから始まります。花や供物を下げ、祭壇を元の状態に戻していきます。

祭壇が片付け終わると、参列者は手水鉢に進み、手を洗い口をすすぎます。これは、身体に付着したかもしれない穢れを洗い流し、心身を清めるための行為です。地域によっては、塩を体に振りかけて清めることもあります。

その後、神職が、参列者のために祝詞を奏上します。祝詞には、故人の冥福を祈り、残された人々が健やかに過ごせるようにとの願いが込められています。そして、神職が手にした大麻（おおぬさ）を振ることで、参列者はお祓いを受けます。このお祓いによって、葬儀を通じて知らず知らずのうちに受けたかもしれない穢れを祓い清め、日常へと戻っていくのです。

また、後祓いの儀では、家の中や周囲を清掃することも重要な意味を持ちます。これは、単に物理的な清掃を行うだけでなく、目に見えない穢れをも祓い清め、清浄な状態にするための象徴的な行為といえます。

火葬後の準備

– 火葬後の準備

火葬場で行われる葬儀もいよいよ終わりに近づくと、参列者は火葬炉の前で故人との最後のお別れをします。深い悲しみの中、参列者はそれぞれに故人との思い出を胸に、静かに火葬炉へと遺骨が収められていく様子を見守ります。

そして、火葬が終わり、収骨を終えて自宅に戻ると、玄関先には手水と清めの塩が用意されています。これは、古くから日本に残る風習の一つで、「後祓い」と呼ばれる儀式です。火葬場という場所から持ち帰ってきてしまったかもしれない穢れを祓い清め、清浄な状態に戻るための大切な準備です。

具体的には、玄関先でまず手水を用いて両手を清めます。そして、清めの塩を手に取り、肩や胸、足元へと軽く振りかけます。この一連の動作を通じて、心と身体を清め、日常へと戻っていく心の準備をするのです。

このように、後祓いの儀式は、葬儀に参列した人々が、故人を偲びつつも、日常生活へと円滑に戻っていくための重要な儀式と言えるでしょう。