五輪塔：あの世とこの世を繋ぐ祈りの形

五輪塔：あの世とこの世を繋ぐ祈りの形

五輪塔とは

– 五輪塔とは

墓地でしばしば見かける、五つの石が積み重なった独特の形をした墓石を、五輪塔といいます。五輪塔は、上から順に「空・風・火・水・地」の五つの要素を象徴する形に積み重ねられています。

この五つの要素は、古代インドの思想から生まれたもので、世界はすべてこの五つの要素から成り立っていると考えられてきました。そして、宇宙の構成要素であると同時に、人間の身体や精神とも深く結びついていると信じられてきました。

そのため、五輪塔は故人の魂がこの五つの要素を経て宇宙へと還り、永遠の安寧を得るようにという願いを込めて建てられました。

五輪塔は、古くから日本で大切に受け継がれてきたお墓の形であり、故人を偲び、その魂を慰めるための象徴として、今もなお多くの人々に選ばれています。

五輪塔の形に込められた意味

お墓で見かけることの多い五輪塔。その独特の形は、単なるデザインではなく、仏教の教えに基づいた深い意味が込められています。

一番上の丸い形をした「空」は、智慧や悟りの世界、つまり大空を象徴しています。その下の半円形の「風」は、風のように自由自在に変化する精神や魂を表しています。三角形の「火」は、情熱や向上心を、半月形の「水」は、心の穏やかさや知性を象徴しています。そして、一番下の四角い「地」は、大地のように揺るぎない安定や不動を表し、故人の魂が安らかに眠れるようにという願いが込められています。

このように、五輪塔は、一つ一つの形に意味が込められた、祈りの形と言えるでしょう。そして、この五つの要素が組み合わさることで、人は自然と調和し、悟りの境地へと導かれると考えられています。

卒塔婆との意外な関係

– 卒塔婆との意外な関係

一見すると全く異なるように見える卒塔婆ですが、実は五輪塔と同じ意味合いを持つと言われています。

五輪塔は、ご存知の通り、インド発祥の仏教思想に基づいたお墓の象徴です。宇宙の構成要素とされる「地・水・火・風・空」を五つの部分で表現し、それぞれが方形、円形、三角形、半月形、宝珠形で表されています。

一方、卒塔婆は、故人の追善供養のために立てられる板状のものです。お寺に参詣すると、お墓の横に幾つも並んでいるのを目にしますよね。この卒塔婆の起源は、古代インドで釈迦の遺骨を納めた仏塔である「ストゥーパ」と言われています。仏塔を簡略化し、板状にしたものが卒塔婆となったのです。

では、なぜ五輪塔と同じ意味合いを持つと言えるのでしょうか？それは、卒塔婆の形に秘密があります。卒塔婆は、上から「空・風・火・水・地」の五つの要素を表しており、部分部分がくびれているのは、それぞれの要素の区切りを表しているためです。

このように、五輪塔と卒塔婆は、形は違えど、故人の冥福を祈り、あの世とこの世を繋ぐ役割を担ってきたと言えるでしょう。