鯨幕と蘇幕:弔事における色の変遷
葬儀と墓石を知りたい
先生、「鯨幕」と「蘇幕」って、どちらも葬式で使われる黒い幕のことですよね? どう違うんですか?
葬儀と墓石の研究家
よくぞ聞いてくれました! 実は、「鯨幕」と「蘇幕」はどちらも同じものを指す言葉なんですよ。 黒い幕なので鯨の体に似ていることから「鯨幕」と呼ばれるようになったと言われています。
葬儀と墓石を知りたい
へえー、そうなんですね!じゃあ、「蘇幕」っていう言葉はどうして生まれたんですか?
葬儀と墓石の研究家
「蘇」という字には、生き返るという意味がありますよね。昔の人は、死は永遠の別れではなく、いつか蘇ると信じていました。そのため、死を悼む幕に「蘇」の文字を用いた「蘇幕」という言葉が生まれたと考えられています。
鯨幕・蘇幕とは。
お葬式で使われる白黒の幕のことを『鯨幕・蘇幕』と言いますが、このような白黒の幕が使われ始めたのは昭和になってからです。それより前は黒い幕が使われていて、さらに昔は白い幕が使われていました。また、神社などではお祝い事の時にも、この白黒の鯨幕が使われることがあります。鯨幕の名前の由来は、その色がクジラに似ているからだと言われています。
鯨幕と蘇幕とは
– 鯨幕と蘇幕とは鯨幕と蘇幕は、どちらも葬儀や法要の際に用いられる幕ですが、その由来や歴史、そして現代における使用状況に違いが見られます。-# 鯨幕白と黒の縞模様が特徴鯨幕はその名の通り、鯨の肌の色に似ていることからその名がついたと言われています。白と黒の縞模様が特徴で、かつては葬儀の際に広く用いられていました。その起源は古く、仏教が伝来した飛鳥時代まで遡るとも言われています。当時の日本では、鯨は海の王者として畏怖の念を抱かれると同時に、その巨体から豊穣の象徴として捉えられていました。そのため、鯨幕を用いることは、故人の冥福を祈り、豊かさを来世にもたらすことを願う意味合いがあったと考えられています。-# 蘇幕黒一色で広く普及一方、蘇幕は黒一色の幕のことを指します。その名前は、中国の宋の時代に蘇州で織られた絹織物に由来するとされています。蘇州は絹織物の産地として知られており、そこから黒色の絹織物が日本に伝わると、その高級感と厳粛な雰囲気から、葬儀の際に用いられるようになりました。江戸時代に入ると、蘇幕は幕府によって奨励され、広く普及していきました。-# 現代における鯨幕と蘇幕現代では、蘇幕が葬儀の際の主流となっています。黒一色の蘇幕は、故人を偲び、悲しみを表す色として、現代の葬儀にも相応しいとされています。一方、鯨幕は地域によってはまだ見られますが、全国的に見るとその数は減少傾向にあります。しかし、その独特の縞模様は、日本の葬儀の歴史を語る上で貴重なものであり、今後もその文化的な価値が継承されていくことが期待されます。
項目 | 鯨幕 | 蘇幕 |
---|---|---|
色 | 白と黒の縞模様 | 黒一色 |
由来 | 鯨の肌の色に似ていることから | 中国の宋の時代に蘇州で織られた絹織物に由来 |
歴史 | 仏教伝来の飛鳥時代から | 江戸時代に幕府が奨励 |
現代の使用状況 | 地域によっては見られるが減少傾向 | 葬儀の際の主流 |
鯨幕の登場
昭和の時代に入り、葬儀の場で目にするようになった鯨幕。深い黒色は、厳粛な雰囲気を醸し出し、故人を偲ぶ場にふさわしいものとして、現在では広く用いられています。
鯨幕が登場する以前、葬儀の場では白い幕が使用されていました。白は古くから神聖な色と崇められ、穢れを払う力があると信じられてきました。死を穢れと捉えるのではなく、神聖なものとして扱う、当時の日本人の死生観が反映されていたと言えるでしょう。
しかし、時代が進むにつれて、西洋文化の影響を受けるようになり、黒が喪の色として徐々に広まっていきました。黒は死や悲しみを象徴する色とされ、西洋では古くから喪服の色として定着していました。
このような時代の変化とともに、葬儀の場でも黒が使われるようになり、鯨幕が登場したと考えられています。鯨幕の深い黒は、白とは異なる重厚感があり、厳粛な雰囲気をより一層引き立てます。現在では、鯨幕は葬儀の場には欠かせないものとなり、故人を偲び、別れを告げる大切な儀式を荘厳に彩っています。
時代 | 葬儀幕の色 | 色の意味 | 当時の死生観 |
---|---|---|---|
昭和初期まで | 白 | 神聖な色、穢れを払う | 死を穢れとせず、神聖なものと捉えていた |
昭和以降 | 黒(鯨幕) | 死や悲しみを象徴する色 | 西洋文化の影響で黒が喪の色として広まった |
蘇幕の普及
葬儀の際に使用する幕は、時代と共にその素材や色が変化してきました。かつては鯨の皮から作られた鯨幕が一般的でしたが、その後、布製の黒い幕、いわゆる蘇幕が普及しました。
黒が喪の色として広く認識されるようになったのは、明治時代以降のことです。西洋文化の影響を受け、黒は喪服の色として定着し、それに伴い葬儀の場にも黒が使われるようになりました。黒は、深い悲しみや喪失感を表すとともに、故人を偲び、敬意を表す色としても受け入れられました。
蘇幕の黒は、鯨幕とは異なる重厚感と格式を感じさせます。深い黒は、葬儀の厳粛な雰囲気を演出し、参列者に故人との別れを強く意識させます。また、蘇幕は鯨幕に比べて安価で入手しやすいため、多くの人々に受け入れられました。
このように、蘇幕の普及は、時代の流れと人々の意識の変化を反映したものでした。黒という色が持つ象徴性と、蘇幕の持つ重厚感が、葬儀の場にふさわしいものとして、今日まで受け継がれています。
項目 | 鯨幕 | 蘇幕 |
---|---|---|
素材 | 鯨の皮 | 布 |
色 | 記載なし | 黒 |
普及時期 | かつて一般的 | 明治時代以降 |
特徴 | – | 重厚感と格式、安価 |
その他 | – | 黒は喪の色として認識、深い悲しみや喪失感、故人を偲び、敬意を表す |
地域や宗教による違い
お葬式の際に故人様を偲び、厳粛な雰囲気を醸し出すために用いられる葬儀幕。現在では一般的に蘇芳色の蘇幕が用いられますが、地域や宗教によっては鯨幕と呼ばれる黒色の幕が使われることもあります。
鯨幕はかつて鯨の皮から作られていたことに由来し、その重厚な黒色が格式の高さを表すことから、古くから武家や公家の葬儀などで使用されてきました。時代と共に蘇幕が主流となっていきましたが、現在でも地域や宗教によっては、鯨幕が伝統として大切に受け継がれています。
例えば、神道と仏教の両方の影響が強い地域では、神道の儀式には鯨幕を、仏式の葬儀には蘇幕を使用するなど、それぞれの宗教儀礼に合わせて使い分けることがあります。また、神社の祭礼など、慶事の際に鯨幕が用いられることもあり、その地域や家のしきたりによって使い分けられていることが分かります。
このように、葬儀幕一つとっても、地域や宗教によって様々な歴史や伝統が息づいています。葬儀を執り行う際には、それぞれの地域や宗教の慣習に配慮し、故人様を偲ぶ場にふさわしい選択をすることが大切です。
葬儀幕の種類 | 色 | 説明 | 使用される場面 |
---|---|---|---|
蘇幕 | 蘇芳色 | 現代の葬儀で一般的に用いられる。 | 一般的な葬儀 |
鯨幕 | 黒色 | 格式が高いとされ、古くは武家や公家で使用された。 | – 神道式の葬儀 – 神社の祭礼など慶事の場合 – 地域や家のしきたりによる |
時代の流れと幕の変遷
かつて日本の葬儀では、鯨幕と呼ばれる白い幕が広く使われていました。白は神聖さや清浄さを象徴し、死を穢れと捉えるのではなく、神聖なものとして扱っていた当時の死生観を反映していました。しかし、仏教の影響が強まるにつれ、喪の色は白から黒へと変化していきます。黒は、仏教においては涅槃や絶対的な静寂を意味し、死後の世界を連想させる色でした。そのため、江戸時代には鯨幕に代わり、蘇幕と呼ばれる黒い幕が主流となっていったのです。
蘇幕は、鯨幕と同様に葬儀の際に用いられ、会場の装飾や仕切りとして重要な役割を担っていました。黒地には家紋や仏教に縁の深い紋様が染め抜かれ、故人を見送る厳粛な雰囲気を醸し出していました。時代が下り明治時代に入ると、政府は葬儀の簡素化を推奨し始めます。この影響から、簡素な白木造りの祭壇が普及し、蘇幕の使用は徐々に減少していきました。
現代では、葬儀の形式も多様化し、地域や宗教によって幕の色も再び変化を見せています。仏式葬儀では黒や紫、神式葬儀では白や緑など、それぞれの宗教観や伝統に基づいた色が選ばれています。時代の流れとともに変化してきた葬儀の幕は、日本の死生観や宗教観を色濃く反映していると言えるでしょう。
時代 | 喪の色 | 幕の種類 | 特徴 | 宗教・思想背景 |
---|---|---|---|---|
古代~中世 | 白 | 鯨幕 | 神聖さ、清浄さを象徴 | 死を穢れとせず、神聖なものと捉える当時の死生観 |
江戸時代 | 黒 | 蘇幕 | 涅槃、絶対的な静寂を象徴 黒地に家紋や仏教紋様 |
仏教の影響 死後の世界を連想させる |
明治時代 | – | – | 葬儀の簡素化が推奨され、白木造りの祭壇が普及 | 政府による葬儀の簡素化政策 |
現代 | 黒、紫、白、緑など | – | 宗教観や伝統に基づいた色が選ばれる | 仏教、神道など |